「給与明細を見ても、何がいくら引かれているのかよくわからない…」という方は多いのではないでしょうか。給料から引かれるのは社会保険料だけではありません。所得税・住民税・雇用保険なども合わせると、手取りは額面の75〜80%前後になることも。
この記事では、給料から引かれるもの全体(社会保険・所得税・住民税・雇用保険)の仕組みと2026年度の最新料率を、会社員・自営業の違いも含めてわかりやすく解説します。
給料から引かれるものの全体像
給与明細に並ぶ控除項目は大きく「社会保険料」と「税金」の2種類に分かれます。
| 種類 | 項目 | 負担者 |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 健康保険料 | 会社と折半 |
| 厚生年金保険料 | 会社と折半 | |
| 介護保険料(40歳以上) | 会社と折半 | |
| 雇用保険料 | 一部自己負担(大部分は会社) | |
| 子ども・子育て支援金 | 会社と折半 | |
| 税金 | 所得税 | 全額自己負担(源泉徴収) |
| 住民税 | 全額自己負担(特別徴収) |
※労災保険は会社が全額負担のため給与明細には載りません。
社会保険とは
社会保険とは、病気・老後・失業・仕事中のケガなど、生活上のリスクに備えるための公的な強制保険制度です。国や公的機関が運営し、保険料は会社と従業員が折半して負担するのが基本です。
「みんなで助け合う」という相互扶助の仕組みで成り立っており、加入は任意ではなく法律で義務づけられています。
💡 社会保険は全部で5種類
- 健康保険(病気・ケガの医療費)
- 厚生年金保険(老後・障害・遺族の年金)
- 介護保険(介護サービスの費用)
- 雇用保険(失業・育児休業時の収入補償)
- 労災保険(仕事中・通勤中のケガや病気)
6つの保険の種類と特徴
病気・ケガで病院に行くときの保険
会社員が加入する公的医療保険です。病院での自己負担が原則3割で済みます。傷病手当金(病気休業中の収入補償)や出産手当金なども支給されます。
保険料は会社と従業員で折半。2026年度の全国平均料率は9.9%(都道府県により異なります)。
老後の年金と障害・遺族への備え
会社員が加入する公的年金です。老齢年金のほか、障害を負ったときの障害厚生年金、亡くなったときの遺族厚生年金も支給されます。
保険料率は18.3%(労使折半で各9.15%)。国民年金の上乗せ部分にあたるため、自営業者より受取額が多くなる傾向があります。
介護が必要になったときの保険
40歳以上が加入する公的保険です。介護認定を受けると、訪問介護・施設介護などのサービスが自己負担1〜3割で受けられます。
2026年度の保険料率は1.62%(全国一律・労使折半)。40〜64歳(第2号被保険者)は健康保険と合わせて徴収されます。
失業・育児・介護休業時の収入補償
失業したときの失業給付(基本手当)、育児休業中の育児休業給付金(給与の最大67%)、介護休業中の補償などが受けられます。
保険料率は業種により異なりますが、一般の事業では労働者負担0.5%、事業主負担0.85%(2026年度)。全額会社負担ではありません。
通勤・業務中のケガや病気を補償
仕事中や通勤中にケガをした場合、医療費は全額補償、休業4日目以降は給与の80%相当が支給されます。保険料は事業主が全額負担するため、従業員は保険料を負担しません。
社会全体で子育てを支える新しい財源
2026年4月から新設された徴収金で、健康保険料に上乗せして徴収されます。集めた財源は保育所の整備や育児休業給付の拡充などに使われます。
保険料率は0.23%(労使折半で各0.115%)。月給30万円の場合、自己負担は約345円です。給料明細には健康保険料と合算して記載されることが多いため、気づきにくい負担です。
料率は段階的に引き上げられる予定で、2026年度:0.23% → 2027年度:0.35% → 2028年度以降:0.36%と毎年増えていきます。
2026年度の保険料率まとめ
| 保険の種類 | 保険料率(計) | 従業員負担 | 事業主負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(全国平均) | 9.9% | 4.95% | 4.95% |
| 介護保険(40歳以上) | 1.62% | 0.81% | 0.81% |
| 厚生年金 | 18.3% | 9.15% | 9.15% |
| 雇用保険(一般) | 1.35% | 0.5% | 0.85% |
| 労災保険 | 業種ごと | なし | 全額 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 0.115% | 0.115% |
⚠️ 健康保険料率は都道府県によって異なります
協会けんぽ(全国健康保険協会)の料率は都道府県支部ごとに設定されています。最も高い佐賀県は10.55%、最も低い新潟県は9.21%(2026年度)。健保組合加入の会社員は組合ごとの料率が適用されます。
📌 モデルケース:月給30万円の会社員(関東・40歳未満・独身)の手取り計算
【社会保険料(自己負担分)】
・健康保険料(9.9%):自己負担 約7,425円
・厚生年金保険料(18.3%):自己負担 約27,450円
・雇用保険料(0.5%):自己負担 約1,500円
・子ども・子育て支援金(0.115%):自己負担 約345円
【税金(概算)】
・所得税:約7,000〜9,000円(年末調整で変動あり)
・住民税:約14,000〜16,000円(前年所得により変動)
・合計控除額:月約58,000〜62,000円
・手取りの目安:月約238,000〜242,000円(額面の約79〜81%)
※標準報酬月額・都道府県料率・各種控除により異なります。あくまで目安です。
所得税・住民税(給料から引かれる税金)
社会保険料と並んで給料から引かれるのが所得税と住民税です。どちらも「稼いだ分に対してかかる税金」ですが、仕組みが異なります。
| 種類 | 税率 | 仕組み |
|---|---|---|
| 所得税 | 5〜45%(累進課税) | 毎月の給料から概算で源泉徴収され、年末調整で精算。収入が高いほど税率が上がるが、超えた部分だけに高い税率がかかる。2026年改正で非課税基準が178万円に引き上げ |
| 住民税 | 一律約10% (市区町村6%+都道府県4%) |
前年の所得をもとに計算され、翌年6月〜翌々年5月に12分割で給与から天引き。2026年改正で非課税基準が119万円に引き上げ(自治体により誤差あり) |
💡 住民税は「前年の収入」に基づく後払い
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、転職・退職・育休でその年の収入が下がっても、翌年は前の高い収入に基づいた住民税が引かれます。特に退職した翌年は会社で天引きされなくなるため、市区町村から納付書が届き、一括or分割で自分で納めることになります。
会社員と自営業(フリーランス)の違い
✅ 会社員が入る保険
- 健康保険(協会けんぽ or 健保組合)
- 厚生年金保険
- 介護保険(40歳以上)
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども・子育て支援金(健康保険に上乗せ)
- 保険料を会社と折半
📋 自営業・フリーランスが入る保険
- 国民健康保険(市区町村が運営)
- 国民年金(月額17,920円・2026年度)
- 介護保険(40歳以上)
- 雇用保険・労災保険は原則なし
- 子ども・子育て支援金(国保にも上乗せ)
- 保険料は全額自己負担
会社員は保険料を会社と折半できるため、同じ収入でも自営業と比べて実質的な負担が少なくなります。また、傷病手当金・出産手当金・雇用保険の給付は会社員のみの特典です。
💡 社会保険の「扶養」という仕組みと今後の改正
会社員の配偶者や子どもは、一定の条件を満たせば追加の保険料なしで健康保険・年金に加入できる「扶養」の仕組みがあります。年収130万円未満が目安ですが、この基準は段階的に見直しが進んでいます。
政府は「働く人はほぼ全員が社会保険に加入する」ことを目指しており、今後も適用拡大の改正が続く見通しです。2026年10月には従業員51人以上・週20時間以上・雇用期間2か月超・学生ではないことでパート・アルバイトの加入義務が拡大され、将来的にはさらに小規模な事業所にも適用が広がる方向で段階的に縮小が進んでいます。政府は最終的に従業員規模の要件を撤廃し、すべての事業所を対象にする方針を示しています。扶養の範囲内に収入を抑えることを前提にした働き方は、今後見直しが必要になるかもしれません。
子ども・子育て支援金(2026年4月新設)
2026年4月から、社会全体で子育てを支援する新しい財源として「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。
💡 子ども・子育て支援金とは
- 健康保険料に上乗せして徴収される(2026年度:0.23%、労使折半で各0.115%)
- 児童手当の拡充・保育所の整備・育児休業給付の強化などに使われる
- 月給30万円の場合、自己負担は月約345円の追加
- 2028年度以降は0.36%に引き上げられる予定
社会保険料控除で節税できる
毎月給与から天引きされている社会保険料は、全額が所得控除の対象になります。年末調整や確定申告の際に「社会保険料控除」として申告でき、所得税・住民税の節税につながります。
自分で国民健康保険料・国民年金を納付している場合も同様です。家族の分を代わりに支払っている場合も控除の対象になります。
よくある質問
一定の条件を満たすと加入義務が生じます。2024年10月の改正で、従業員51人以上の会社では「週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月超の雇用見込み」の条件を満たすパート・アルバイトは社会保険加入が必須になりました。加入により傷病手当金や厚生年金の恩恵を受けられます。
なお、政府は今後もこの適用範囲を拡大していく方針です。
「毎年どんどん上がる」というより、2009〜2012年に大幅に上がり、その後は10%前後で横ばいが実態です。
| 時期 | 全国平均の目安 |
|---|---|
| 2009年(改革前) | 約8.2% |
| 2012年〜 | 約10%前後 |
| 2025年 | 10.0% |
| 2026年 | 9.9%(珍しく引き下げ) |
ただし2026年は健康保険料が0.1%下がった一方で、介護保険料が上がり(1.59%→1.62%)、子ども・子育て支援金(0.23%)が新設されたため、給与から引かれる社会保険料の合計は実質的には増えています。「健康保険料だけ見て安心」ではなく、全体の負担で判断することが大切です。
はい、こちらも上がっています。国民健康保険料は市区町村ごとに計算が異なりますが、国が定める年間上限額が毎年引き上げられており、4年連続の値上がりが続いています。
| 年度 | 国保の年間上限額 |
|---|---|
| 2022年 | 99万円 |
| 2023年 | 104万円 |
| 2024年 | 106万円 |
| 2025年 | 109万円 |
| 2026年 | 110万円 |
さらに、国保には会社員の健康保険と比べて不利な点が2つあります。①保険料は全額自己負担(会社員は会社と折半)、②扶養の仕組みがないため家族が多いほど保険料が加算されます。自営業・フリーランスの方は、値上がりの影響をより大きく受けやすい構造になっています。
📋 この記事のまとめ
- 給料から引かれるのは社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)+所得税+住民税
- 月給30万円の会社員の手取りは約79〜81%が目安
- 所得税は毎月源泉徴収→年末調整で精算。住民税は前年所得に基づき翌年6月から徴収
- 2026年度の健康保険料率は全国平均9.9%、介護保険料率は1.62%
- 2026年4月から子ども・子育て支援金(0.23%)の徴収開始
- 会社員は保険料を会社と折半・扶養の仕組みあり。自営業は全額自己負担・扶養なし
- 社会保険料は全額所得控除の対象になる